たこわさ

アニメやゲーム、映画・本などのレビュー・感想・情報を中心にお送りする雑多ブログ。

Fate/stay night [Unlimited Blade Works] #01「冬の日、運命の夜」感想

原作プレイ済み。ディーン版及びFate/Zero視聴済み。
(以下ネタバレ)

あらすじ

10年前の大災害の生き残りである少年・士郎。
「魔法使い」を自称する衛宮切嗣に命を救われ彼の養子となった士郎は、いつしか全ての人々を救える「正義の味方」を志すようになる。

しかし、高校生になった今でも、魔術は半人前、「正義の味方」には程遠いただのお人よしの便利屋というポジションが士郎の現実だった。
ある日、悪友の慎二に押し付けられた弓道場の掃除で夜遅くまで学校に残っていた士郎は、校庭で人間離れした剣劇を演じる二人の男を目撃する。
突然出くわした非現実にその場を離れようとした士郎だったが、その動きを槍使いの男に気取られ、口封じのために心臓を一突きにされてしまう。

ほぼ即死状態の士郎だったが、その場に居合わせた「誰か」にすんでのところで命を救われる。
茫然自失のまま家に帰り着いた士郎だったが、彼が生きている事を察知した槍使いの男の襲撃に遭い、拙い魔術で応戦するも遂に追い込まれてしまう。

絶体絶命の士郎だったが、槍使いの一撃が迫る中でもその意志は折れず、毅然とした態度で槍使いの男と向き合う。
そんな彼の意志に呼応したが如く、魔力の奔流と共に何者かが現れ、槍使いの男を撃退する。その人物は、士郎にこう問いかける「――貴方が私のマスターか」と――。


#01 冬の日、運命の夜

#01 冬の日、運命の夜

感想

初回#00に続き一時間スペシャルのエピソードでしたが、いやいや密度が濃いのなんの! しかも詰め込んだ感は全く感じなくて、濃厚にして美味、といったところ。内容が濃いのにあっという間の一時間でした。

プロローグにあたる初回に凛視点で語られたエピソードの裏をなぞるように展開する物語が、非日常と日常のクロスポイントとなって視聴者を世界観に引き込む手法は、原作のそれをしっかりと踏襲していて実に秀逸。わざわざ一時間枠を確保して、セイバー登場までを描いたこだわりぶりも凄い。

さて、原作の所謂セイバールートではただの特攻馬鹿にしか見えず、それを基にしたディーン版TVシリーズの視聴者からはあまりいい印象で迎えられなかった主人公・士郎ですが、今回のアニメのベースになっている凛ルート「Unlimited Blade Works」では、士郎の描き方が少し変わってきます。本アニメもそこら辺の事をよく意識しているのか、細かい描写を重ねる事で士郎を人間味あふれる青年に描こうとしている事が伺えます。

自分に世話を焼いてくれる後輩・桜への思いやり、幼馴染であり姉替わりである藤ねえがそれとなく自分を気遣ってくれた事に対する感謝の表情、憧れの同級生・遠坂凜に少しでも近づきたいという想いから自然な動作を装って一成と会話する彼女の様子を盗み見する純情さ、全ての人々を救う「正義の味方」への憧れを抱き続けつつも切嗣の語った「正義の味方の限界」や今の自分の在り方がただのお人好しにしかなっていない事を思い知り苦悩する姿など、士郎の内面、特に等身大の青年っぽさや情に厚い部分、そしてお人好しの仮面の下に隠された苦悩をきっちり描いているので、ディーン版ほど士郎がウザい存在には感じなくなったのではないでしょうか?

そして満を持して登場のセイバー。凜がエピソードヒロイン*1だとすると、セイバーは作品全体のヒロインといったところですが、Fate/Zeroでの描写を踏まえた彼女の表情や言動がまた、実に力が入っていました。士郎が名乗った時の微妙な表情とかはZero視聴者への直球なファンサービスですね。
また、セイバー対ランサーの戦闘シーンが前回のアーチャー戦とは全く違った風味づけになっていてこれまた秀逸。アーチャーが身体能力のハンデを手練手管で補う曲者な戦い方だったのに対し、セイバーは持ち前のパワーとスピードを最大限に生かした嵐のような猛攻。セイバーの剣が風の結界に隠されている事を生かした、流れるような剣さばきは「作画の人大変だよな……」と思わず心配してしまう程の力作*2

また、ランサーの宝具・ゲイボルグの発動シーンも素晴らしい。魔力の奔流だとか因果の逆転だとかをああいった形で描くのか、とひとしきり感心。
ちなみに、アニメだけ観ている人には分かりにくいかもしれないので一応補足しておくと、ゲイボルグの「因果逆転」の能力は「発動した瞬間に既に命中する事が決定している」という、過程の前に結果が決まってしまうという恐ろしい能力。本来ならば発動すれば最後、心臓をえぐられるのですが、セイバーには予知能力に近い直感と魔力に近い幸運*3スキルがあるのですんでのところで助かった、という事らしいです。原作によれば。まあつまり、セイバーはそれだけチート級の強さを持っている、という事で。Zeroだとあまりパッとしなかったですが、十分最強クラスなんですよ?w

本当に濃い一時間でしたが、私的に一番素晴らしいと思った点は、最後を凛の邪悪可愛い笑顔で締めた事。スタッフ、分かっているじゃないか! と。

believe(期間生産限定アニメ盤)(DVD付)

believe(期間生産限定アニメ盤)(DVD付)

*1:正しくは士郎と並び立つもう一人の主人公なのですが。

*2:エフェクト周りはCG処理な事が多いでしょうがそれでも凄い凝りよう。

*3:人生における幸の多さではなく、あくまで戦闘におけるラッキーな回避能力。