たこわさ

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「ワールドエンブリオ」最終12・13巻 感想

ワールドエンブリオ (12) (ヤングキングコミックス)

ワールドエンブリオ (12) (ヤングキングコミックス)

  • 作者:森山 大輔
  • 発売日: 2014/09/30
  • メディア: コミック
ワールドエンブリオ (13) (ヤングキングコミックス)

ワールドエンブリオ (13) (ヤングキングコミックス)

  • 作者:森山 大輔
  • 発売日: 2014/09/30
  • メディア: コミック
おおよそ十年間続いた作品に幕が下りました。一つの「ウソ」から始まったこの物語は、一体どんな結末を迎えたのか?
(以下、ネタバレ)

「人類の敵」となった天音姉。その真の目的はエンブリオの内部に蓄積された「人々の死の記憶」の集合体・ワスレナグサの浸食から人類を守る事でした。しかし、絶対に守り抜かなければならない、人類に知らせてはいけない「秘密」を抱えていた彼女は、真実を語る事も出来ずただ一人悪を演じながら孤独な戦いを続けるしかなかった。――そんな彼女の本心を、彼女が最期を迎えたその瞬間に知る事になった陸の絶望はいかばかりのものだったでしょうか?
ワスレナグサの流出も抑えられず、天音姉も救えず、絶望にひざを折る陸。しかし、そんな彼を叱咤し、奮い立たせる人物が一人――レナです。
陸を支え、時に彼に支えられ、名実ともにパートナーとして一緒に戦ってきたレナ。自らも背負いきれない罪を犯し、絶望の淵にあったはずの彼女ですが、天音姉の最期の力によって救われ、そしてまだ自分達に出来る事があると知った彼女。星(かがやき)を取り戻し、彼女は再び陸に手を差し伸べました。更には、陸が過ちにより失ってしまったネーネを取り戻すための道しるべにまでなり……。アリスにもツッコまれていましたが、彼女のそんな献身というか不器用な思いやり、囚われのお姫様などではなく共に肩を並べて戦うその姿勢こそが、きっと陸を真の意味で救ってきた彼女の強さなのでしょう。

さて、再び立ち上がった陸と、彼を宿主としたネーネ・エンデ・そしてジュリの欠片を受け継いだレナ達三人の柩姫によりワスレナグサをエンブリオ内部に回収し人類を救うための最後の作戦が実行されます。初実島の呪縛より解放されたタカオの助力もあり、ワスレナグサを暴走させていた要因を排除する事に成功した陸。しかし、その最中、エンブリオの記憶に触れた陸は、天音姉が最後まで隠そうとした残酷な真実――全ての人類は既に棺守と化していて、エンブリオの力によってかろうじて人類としての姿を保っているだけ――を知ってしまいます。
再び、真実に押しつぶされるようになる陸。しかし、そんな彼の耳には懐かしい声による問いかけが。

じゃあ…
あのまま死んでいれば良かったか?

それは、陸に刃旗核を託し死んでいった洋平の声。死してエンブリオに光(キオク)として格納されていた彼の言葉に、しかし陸はこう答えます。

なめんなよ 洋兄!!

人々から想いを受け継いだ陸はもう決して屈しない。もらった命を呪いにするのも希望にするのも、全部自分自身次第だという事に気付いたから。

そして戦いは最終局面へ。ワスレナグサによる汚染を自らの刃旗核に集め、それを討たせる事で事態を終息させようと自ら生贄となったタカオとの決戦。刃旗核が限界に達しつつも、ネーネが自ら刃旗と化すことで力を得、遂には汚染核の浄化に成功します。
それを見届け、今度こそ自らの死をもって罪を償おうとエンブリオの底へと落ちていくタカオ。しかし、彼に救いの手を差し伸べる影が二つ。一つは、彼の心に温もりを与え、そして死んでいったユイの魂。もう一つは、タカオと不思議な信頼感で結ばれた「背中を預けられる相手」陸。「生きて償え」と差しのべられたその二つの手に、ようやくタカオは本当の意味で救われました。

戦いは終わり、仲間達は欠けることなく、またエンデの結界に守られた人々も無事でした。しかし、既に棺守と化した人々はもう救えない――そう誰もが思った時、思わぬ行動に出た者が一人――レナでした。
かつて彼女が初実島で犯した罪、そして今回、ワスレナグサの暴走を招く一端となってしまったという罪、それを償う為に彼女が実行したのは、自らに宿る刃旗核全てを小さな欠片と化し、棺守となってしまった人々全てに分け与える事でした。かつて棺守化した陸が洋平の刃旗核に救われたように、レナは全ての人々を救ったのです。
しかし、全ての刃旗核を失うという事は、柩姫としての力を失い、記憶も失くすという事。段々と自分と言う存在が薄れていく中、それでも陸とネーネが自分にとって大切な人であり、そして陸から何かの返事をドキドキしながら待っていた事だけは最後まで残っていて……。
陸が彼女を抱きしめ、「その返事」を告げようとしたその時には、既にレナの人格は失われ、深い眠りについてしまいました。
天音姉を失い、今またレナさえも失ってしまうのか? 絶望を前にした陸ですが、彼はもう立ち止まりません。ネーネとエンデ、残った二人の柩姫の力を借り、たった一人の為の「ウソ」で世界を塗り替え、欺くことを決意しました……。

――数年後、F・L・A・Gは世界規模の組織となり、エンブリオから得られた技術を駆使し世界中の棺守を「治療」する為に戦っていました。全てに決着がついたはずの世界で、何故まだ棺守が発生するのか?
それは、新たな感染源の出現によるもの。世界に宣戦布告し、感染源として活動する謎の人物。「あの日」、エンブリオと共に現れ世界を混乱に陥れた元凶――スラガ。その正体は、世界を救ったはずの天海陸。しかし、誰も陸の事を覚えておらず、天音姉による宣戦布告も全てスラガの仕業だった事になってしまっています。

※管理人より:「全文バレ」みたいな感じで本記事を紹介されてしまったので、後半部分を大量に削除しました。ストーリーを知りたい方はきちんと単行本を買ってください。



心残りは本作がアニメ化されなかった事ですが、「クロノクルセイド」のように名前だけ一緒で物語もキャラクターも作品テーマも全て改悪されていた悪夢のような例を思うに、もしかするとアニメ化されなくて良かったのかも、とも思ってしまったり。

とにもかくにも、この素晴らしい作品を描き切ってくださった森山大輔先生に惜しみない拍手と感謝の念を贈りたいと思います。

以上、感想と言うかあらすじのまとめになってしまいましたが、この辺りで終わりとしたいと思います。