たこわさ

アニメやゲーム、映画・本などのレビュー・感想・情報を中心にお送りする雑多ブログ。

「P3 PERSONA3 THE MOVIE #1 Spring of Birth」感想

先日ようやく観てまいりました。
(以下、ネタバレ)
原作ゲームは未プレイ。
TVアニメ版「ペルソナ4」(以下、P4)がそれなりに面白かったので、期待して観に行きましたが……P4よりも洗練された面白さがありました。
正直、P4は日常&ギャグ展開が多く間延びした印象もありましたが、本作は日常描写は必要最低限で、怪物が跳梁跋扈する「影時間」とそれにまつわる謎、迷宮「タルタロス」の探索、そして人間ドラマに的を絞って描かれていたので、全編にわたって弛緩した空気を感じず、緊張感を持って観られました。
もっとも、それは尺の長いTVアニメと内容を凝縮しなければならない劇場アニメという媒体の違い、とも言えるかもしれませんが。
また、主人公のキャラクター設定が実に絶妙。登場してしばらくの間は「人間味の欠片も無い無感情な駄目人間」という印象しか持たなかったのが、段々と人間性を発露させて最後には「クールな熱血漢」とでも呼ぶべき静かな情熱をもった人物へと変化していく、その過程の描き方が実に良い。
その主人公の人格の変化に一役買っているのが、今回のヒロイン的役回りであった山岸風花の存在。ゆかりや会長のような「華」のあるヒロイン勢が幅を利かす中で、ベリーショートのおでこちゃんでいじめられっこで内気という地味を絵に描いたような風花が*1、地味に主人公と絡んで彼の隠された優しさだとか人情だとかを刺激していき、最後には仲間達の危機へと駆け付ける情熱さえも与えている。それと同時に彼女自身も強さを身に付けていくという展開も熱い。
ペルソナ召喚が拳銃型の召喚機で頭を打ちぬく、という設定は(原作ゲームの時にも)激しくどうかと思いましたが、そこの所もアニメーションとして映えるように上手く処理されていてひとしきり感心。P4のように出しっぱなしではなくあくまで攻撃アクションとしてペルソナを一時だけ召喚する設定もバトルにメリハリを与えていてグッドでした。
そして何より嬉しいのは、「女神異聞録」と銘打っていた時代のペルソナの雰囲気がしっかりと継承されていた事。実は、原作ゲームに手を出していないのは、あまりにもそれまでのシリーズと異なるポップい見た目を嫌気した、というのが大きかったのですが、もしこの劇場版の雰囲気が原作ゲームのものを踏襲した結果だというのなら、評価を改めなければいけないな、と。
原作付きアニメの優秀さを示す一つの指標として「観終わった後に原作に手を出したくなる」というものがあると思いますが、本作は十分にそれを満たしている印象。続きも気になります。

*1:しかしそんな華のないビジュアルなのに能登麻美子さんが声を当てていると凄まじいヒロイン力を発揮するという驚愕の事実(?)。