たこわさ

アニメやゲーム、映画・本などのレビュー・感想・情報を中心にお送りする雑多ブログ。

「フルメタル・パニック! アナザー6」感想

段々と刊行ペースが遅くなっている感のある本作ですが、その分巻を重ねるごとに内容が良くなっている感触も。
(以下ネタバレ)
ロボット物というジャンルは一部の特殊な作品を除いて、その殆どが軍隊やら戦争やらを舞台にしているので、所謂「巻き込まれ型」の主人公には必然人生の大きな岐路が待ち受けていることになります――即ち、人を殺せるか否か、という問題が。
当初はアルバイト同然の身の上であり、偶発的に出くわした「実戦」以外は模擬戦がその活動の中心となっていた達哉も、見知った人間の死を間近で目撃し、上司がテロに倒れる事態に遭遇してもなお、自分の意志で正真正銘命の担保のない戦場にその身を晒す事を選んだ時から、「その瞬間」が訪れることは覚悟していた事でしょう。事実、第5巻においてその覚悟は半ば証明されていました。結果的に相手が無人機だったとはいえ、その事実を知らぬまま彼は敵機を「撃破」したのです。
しかし、それはAS越しに見知らぬ誰か相手だったからこそトリガーを引けたのかも知れず、達哉自身宙ぶらりんの状態が続いていたであろう事は想像に難くありません。
そして、遂に訪れてしまった「生身の人間」相手に引き金を引けるかどうか、自らの行動が即相手の死に繋がり、それを直視する事が出来るのかを試される時。その相手は「見知らぬ誰か」ではない、敵対し命のやり取りこそしてきたが顔も名前も知っている相手――三条旭。
しかも、選択を迫られた状況がまた過酷極まりない。共倒れになりかねない危機的状況下、旭の姉・菊乃と共に何とか協力して脱出しよう、生き延びようと奮闘するも、旭はASごと瓦礫に押しつぶされており人力ではどうしようもない。迫る火の手を前に、姉に介錯を求める旭。最愛の弟を、苦痛から救うためとはいえ殺さなくてはいけないという事実に押しつぶされそうな菊乃――そして拳銃を握り締める菊乃の手にそっと自らの手を重ね、共に旭を「殺す」事を選ぶ達哉……。
近年のロボットアニメでは、とかく軽視されがちな「敵機を撃破するという事は搭乗者を殺すという事」という葛藤を散々に描いた後で、それよりも更に生々しい「生身の相手を殺す」というシチュエーションを主人公に突きつけた本作に、素直に賛辞を送りたい。
……しかし、達哉はリーナと既にツーカーの仲になっているのに、菊乃とはファーストキスを交わし、また共に「はじめての殺人」を犯し、フラグだけなら菊乃との方が多い上に重いんですよね……。今後も重い展開*1が続く事への布石なような。

*1:欝展開とは違う。