たこわさ

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映画「HK 変態仮面」感想

HK/変態仮面 アブノーマル・パック[DVD]

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娯楽映画としては非常によく出来ており面白かったです。
以下、ネタバレ含む原作をリアルタイムで読んでいたオサーンによる感想となります。

まず、主人公を演じる鈴木亮平さんの肉体美が凄い! あの体をこの映画のためだけに作ったというのだから、お前こそ真の筋肉さんよ……と思わず謎の称号を(勝手に)贈ってしまう程でしたが……それはさておき。

独特のノリを持った娯楽映画(パロディもあるよ!)

本作を実写映画化してしまったという事自体が大いなるギャグな訳ですが、本編もそれを意識してか徹底的に娯楽作品としての作りを追求している印象を受けました。逆に真面目さを求めてはいけないというかw
OP映像がまんまマーベル作品を思わせるような原作画像を背景にしたものだったように、パロディ要素も多め。特にスパイダーマンのパロディが多めで、緊縛用のロープをスパイダーストリングスの如く操って摩天楼を飛び回ったり、他人が近づけぬ高層物の頂上で街を見下ろしたり、新聞で大きくその存在が取り上げられてしまったり、もう好き勝手やってます。
敵役もコテコテで、まるで香港のカンフー映画の悪役のようにしょうもない理由とろくでもない手段で攻めてくる所が良い意味で馬鹿馬鹿しい。
最後にはエヴァンゲリオン初号機まで登場していたので、他にもパロディシーンがあったかもしれません。
筋立てもメリハリが利いていて、飽きさせる事がありませんでした。もちろん、この手のコメディ作品に必須とも言える「ツッコミがいのあるストーリー」も備えていて、偽・変態仮面普通に強いのになんで先に刺客として差し向けなかったの? とか、偽・変態仮面による洗脳の伏線とか回収してないじゃん! とか、鑑賞中はツッコミどころが絶える事がありませんでした。
――以上、基本的に映画としては非常に面白かった訳ですが、じゃあ原作を愛している人間からみたらどうなの? というところで根本的な問題というか納得がいかなかった部分が多々ありました。

原作とは別物と割り切って観る覚悟が必要

まず、主人公・狂介について。原作では、正義感が強くてそれなりにイケメンで拳法部の次期エースと目される腕前を持つ、所謂「昔の少年漫画だったら普通に主人公張っている」タイプの彼でしたが、本作ではヘタレです。この上ないヘタレです。一応、所々正義感に燃える場面はあるものの、悪党を退治する事より自分の色事(しかも相手にそんなつもりはない)を優先するようなヘタレ野郎です。腕っ節も弱いです。「昔の少年漫画だったら主人公に助けられてそんな彼に憧れつつもヒロインへの片思いから嫉妬の念にもかられる脇役」タイプです。
「我々の愛した色丞狂介は死んだ! 何故だ!!」
「実写映画だからさ」
――閑話休題
まあ、一本の映画として見せるためには等身大ヒーローモノのテンプレ通り、ヘタレだったのが急に物凄い力に目覚めてしまって愉悦を感じると共に本来の自分とのギャップに葛藤するタイプの主人公像の方が作りやすいでしょうから理解し難くはないんですが、それでもやっぱり父親の血を受け継いだステレオタイプな少年漫画主人公である狂介が、母親の変態の血を目覚めさせる事で「正義の変態」に変身してしまうというそれまでの少年漫画へのアンチテーゼ的な設定の面白さが原作の魅力でもあった訳で、そこのところ原形留めていないのはどうなのよ? と。
また、変態仮面はあんな変態なのに無敵だからこそヒーローとして我々の心に焼き付いて離れなかったわけで、一時苦戦する位なら演出として受け入れられるけど、「第三者の助けがなければ負けていた」というシチュエーションは似合わないし、ましてやはっきりと敗北してしまったりしたら台無しな訳で。
「絶対に負けない無敵のヒーロー(でも変態)」というアンビバレンツな魅力が恐るべき相乗効果をもたらしたからこそ、一年程度の連載期間にも関わらず今でも語り草になるような愛された作品になった訳で。本作は確かに面白かったけれども、何年も人の心に残り続ける作品になれるのかな? という点については少々疑問。
あと、愛子については名前と転校生という属性以外全く別人でしたね。誰だよw

最後に

上記長々と書いたように、娯楽映画としては非常に面白いものの、原作の魅力が「変態ヒーロー」という記号のみでしか残っていないという、中々に評価の難しい作品でございました。名台詞の一つである「それは私のおいなりさんだ」も少々強引な場面で出てきますし。もちろん、この映画のお陰で原作が再評価された事は喜ばしい事なんですが、どうやら私は自分で思っているよりも強く「変態仮面」という漫画を愛してしまっていたようで。一抹の寂しさも感じずに入られなく……。
そして、最後にこれだけは言いたい。――なんでパンフレット製作すらしてないのさ?(´;ω;`)