たこわさ

アニメやゲーム、映画・本などのレビュー・感想・情報を中心にお送りする雑多ブログ。

遂に最終巻「フルメタル・パニック!12」ずっと、スタンド・バイ・ミー(下)感想

一日遅れでGETし本日一気読みしました。
(以下ネタバレ感想)

死にたくない……

ミラから預かったメモリーカードの中に入っていた、陣代高校の面々からのメッセージを観て、宗介が初めて漏らした生への渇望とただ溢れる涙。
もう、このシーンで眼球からラムダドライバの力場があふれ出しそうだったんですが、その直後の

私は人間ですか、機械ですか?

というアルの問いかけに「やられた!!」と思わず膝を打ってもらい泣きする事も忘れてしまいました。

この作品の大きな謎の一つに「何故、アルはただのAIではなく『人間』かのような振る舞いを行うよう作られたのか?」というものがありましたが、まさか最後の最後の一番大事な場面でそれが明かされることになろうとは! 確かに散々伏線が張られていましたが、これは私的には予想外でした。
もし、宗介がアルへの答えを間違えていたら、もしかするとそこでジ・エンドだったかもしれないと考えると、宗介が見事生き残れたのは彼が兵士として成長しただけではなく、「人間」としても大きく成長していたから、と言えましょう。「人間」というものについて宗介が真剣に考えるようになったからこその「勝利」だったのだろう、と。

さて、一方で「人間」になれなかった事で敗北したのがレナードであると言えるでしょう。最期の時、「まともになりたい」というただ一点のみで宗介と少しだけ分かり合えたレナード。しかし彼は、「まとも」になる方法として「まともじゃない」手段を選んでしまった。もちろん、彼が「まとも」な手段を選んでいたからといって、「勝利」することが出来たかどうかは怪しい所なのですが……*1

そして更に一方で、「人間」であるが故に敗北を向かえたのがアンドレイ・カリーニン少佐でありましょう。冷徹な軍人の顔をした彼は、その実妻子を失った悲しみを乗り越える事が出来ない弱い人間でもあった。しかしながら同時に、「息子」の身を案じる優しい人間でもあった。死期を悟った彼の「最期の訓練」により、宗介はある事実を突きつけられます。

自分に殺せるわけがない。
親父なのに。

「敵」であるはずのカリーニンに止めをさせない宗介。何故ならば、カリーニンは彼にとって「父親」であるから――宗介は、自分が生き残るためとはいえ父親を殺せるような非人間的な男ではないから。最後の最後に、カリーニンは「息子」を「まともな人間」に戻してあげたかったのでしょう。
宗介に「親父」と呼ばれ笑顔を見せた彼の最後の言葉は、宗介の母親が遺した「イキナサイ」という日本語でしたカリーニン少佐は、間違いなく宗介の父親であったと言えるでしょう。

さて、死に逝くものたちの一方、死から生還した男がいます。前回バレバレの伏線が張られていましたが、我らがクルツ・ウェーバーが帰ってまいりました! ――といっても、作中人物からは「台無し」とか「空気読め」とか散々な罵声を浴びせられてますが、まあそれも一種の愛だと思います。

それにしても、主要人物だろうとあっさり死ぬ時はあっさり死ぬこの作品で、まさか「実は生きていた」があるとは思いませんでした*2。でも、前回の感想でも書きましたが、不思議とそれに腹を立てる気は起きないんですよね。やっぱり、クルツにかっこいい死に様は似合わないし、ギャグキャラクターを地で行くようなみっともない生き様の方が彼らしくてかっこいい、という事なんでしょう。まあ、なんにしても嬉しいサプライズでございました。


あとがきによれば、本編は完結ですが外伝は何本か書く意向があるそうなので、そちらを楽しみにしつつ、じっくりと余韻を味わいたいと思います。

で、アニメ第三期はいつですかー?( ;゚皿゚)ノシΣバンバン!!

*1:レナードが本格的に歪んでしまった原因である母の不貞を、実はテッサも知っていたという事実から、結局はレナードがレナードであるが故に「まとも」にはなれなかったのではないか、と考える事も出来。

*2:ガウルンは実際ほぼ死んでいたので除く。