たこわさ

はてなダイアリーから移ってきました。暫くの間、レイアウトの乱れやリンク切れ等あると思いますが、ご容赦を。

「PSYREN」(12)

PSYREN 12 (ジャンプコミックス)

PSYREN 12 (ジャンプコミックス)

(以下ネタバレ)

「主人公の隠された能力が覚醒→逆転勝利!」という、使いどころを間違えると
作品全体を陳腐極まりないものにしてしまうギミックを、本作ははっきりと
「否定」しているように見受けられる。

かつてアゲハが「暴王の月」を覚醒し危機を脱した場面も、単純な「勝利」ではなく、
「未熟な能力の暴走により自身の命を危険に晒し、タツオとの離別の間接的な
要因ともなった」苦い出来事として描いているし、その後の能力の向上も、
アゲハ本人の努力の賜物であり、決して「都合よく能力が覚醒」といった
描き方をしていない。

上記は以前、Amazonに投稿した本作に対するカスタマーレビューの一節だが、この認識は今でも変わっていない。アゲハの勝利は、いつだって何かの「代償」を支払って得てきたものだ。
今回描かれた「代償」、それは以前マツリ先生が危惧していた「夜科の迷いのなさ」だ。
今までも人間型の禁人種をあまた屠ってきた夜科達だが、今回の敵「キャンディマン」は紛れもなく「現代に生きる人間」であった。
いくらPSYの使い手であると言っても、敵であると言っても、本来夜科達にとって異世界ともいえるサイレン世界とは違う、夜科達が生きる日常空間である「現代」において「人間」を相手に生き死にの戦いを繰り広げる、という事が、どれだけの意味を持つかを我々読者は知っている筈だろう。
だが、夜科は迷わない。「殺す」事を一切迷わないし後悔しない。恐らく、次巻辺りに収録されるであろうエピソードにおいて、サイレン世界を生き抜きタフになった筈のある人物が、それでも人の原型を留めた禁人種を殺す事に僅かな後悔を覚えた事と、非常に対照的に描かれている。
恐ろしいまでの割り切りにより、冷静と言うよりは冷酷な判断をも迷わず下す夜科アゲハ。一方で彼が、非常に人間的な、人情味溢れる人物である事も確かだ。
その矛盾がいつか彼を追い詰める事にならないよう祈りつつ、次巻も楽しみに待ちたい。