たこわさ

アニメやゲーム、映画・本などのレビュー・感想・情報を中心にお送りする雑多ブログ。

山田風太郎「叛旗兵 妖説直江兼続」上・下

叛旗兵〈上〉―妖説直江兼続 (徳間文庫)

叛旗兵〈上〉―妖説直江兼続 (徳間文庫)

NHK大河ドラマ天地人」ブームにあやかろうとしたのか、私の記憶が確かならば絶版となって久しかった山田御大のこの作品が数ヶ月前に文庫化されていて、発売後すぐに購入→読了しておりました。
内容としましては、実に山田風太郎らしい「1%の史実に99%の虚構。だがそれがいい」的な、個性豊なキャラクター達が怒涛の展開を繰り広げる痛快伝奇小説であり、また山田風太郎らしく「こんな無茶苦茶な設定なのに実に直江兼続という人物を見事に描いている」時代小説でもあります。
今や、漫画やパチンコで人気者となってしまった前田慶次郎をはじめとする「直江四天王」の面々や、ムリヤリ出したとしか思えないのに実にしっくりと舞台に馴染んでいる宮本武蔵佐々木小次郎など、一癖も二癖もある連中がある時は熱く、またある時は滑稽に大立ち回りを演じる姿は、小奇麗にまとめた大河ドラマ天地人」と対照的で、実に痛快極まりない。
実にバレバレな「某人物」の正体も、外連味溢れる山田作品のテイストとしては申し分ないギミックで、いちいち登場人物に「気づけよ!」などとツッコミを入れるのが楽しくて仕方ありませんでした。
そして、この作品の真の凄さは、そういった荒唐無稽な活劇部分よりも、「直江兼続」という稀代の武将を実に見事に描ききった所にあると感じました。
ラストシーンで涙を流す兼続と、彼の真意を知りあえて彼の敵となることでその心に殉じた「彼ら」のその心意気。「愛」というならばあれこそ「愛」なのではないだろうか? と言ってしまうのは少々穿った感想でしょうか。
叛旗兵〈下〉―妖説直江兼続 (徳間文庫)

叛旗兵〈下〉―妖説直江兼続 (徳間文庫)