たこわさ

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週刊少年ジャンプ「ダブルアーツ」打ち切りに思う事

ダブルアーツ 1 (ジャンプコミックス)

ダブルアーツ 1 (ジャンプコミックス)

と言う事で、今週発売のWJで「ダブルアーツ」が清々しいまでに打ち切られました。
(以下ネタバレ含みます)
私はこの漫画、流し読みしつつも作者の筆力をじわじわと感じていて、長く続くようだったら単行本そろえようかな、なんて思っていた程度の評価しかしていなかったんですが、最終回を読んで「これを打ち切るか、ジャンプ編集部!?」と思わず一人憤慨してしまう位に、作者への評価が上がってしまいました。
打ち切りに限らず、連載漫画という存在は作者の描きたい事を全て描ききった上で綺麗に終わる、という事例が極端に少ない形態だと私的には思います。伏線をどうにか消化したものの、作者が望んでいたキャラクターの掘り下げや裏設定などが、週刊スケジュールの慌しい日々の中で埋もれてしまって結局描ききれなかった、というような愚痴を、単行本のあとがきなどで時折目にする事もあります。
だからこそ、「最終回」というものが特別大きな意味を持ってくる、と思います。伏線の消化もままならなかった打ち切り漫画ならば、なおの事。
ジャンプの打ち切り漫画の最終回と言うと、「俺達の戦いはこれからだ!」だとか「オレはようやくのぼりはじめたばかりだからな。このはてしなく遠い男坂をよ…」だとか、もう伏線の回収も何もかも諦めて突然に「第一部・完」としてしまう往年のパターンから、ダイジェストでキャラクター達のその後や伏線の答えらしきコマを散りばめてフェードアウトするパターンの二つが多いように見受けられます。*1
しかしながら、今回の「ダブルアーツ」の最終回は、そのどちらも当てはまらないものだったと私は感じました。
謎の組織の事も、「トロイ」の謎も、その後の展開も*2全部放り投げた上で、主人公キリとエルーのお互いに対する思いのみを、ちょっとしたギミックを交えて描ききってくれるとは思いませんでした。「少年が戦うのはいつだって好きな少女の笑顔を守るためで、少女が挫けないのは好きな少年が支えてくれるから」という少年漫画の命題の一つを、打ち切り漫画の最終回でここまで堂々と描いてくれるとは。
様々な先人達が、「ソードマスターヤマト」を地で行くような、伏線を慌てて即席消化したり「第一部・完」なんていうごまかし、言ってみれば「逃げ」の最終回を連発してきた中で、「攻め」の最終回を描ききってくれるとは!
もちろん、旅の途中で終わってしまったので「俺達の戦いは…」のパターンとも呼べるかもしれませんが、突然の最終回にあたって「逃げ」ずに、おそらくは「ダブルアーツ」という作品の最も大事な部分である主人公二人の思いを描く事を選択して「攻め」てくれた作者・古味直志氏に、素直に賛辞を送りたいと思います。

そしてこの何十年、旧態依然とした頑ななやり方で名作の芽を摘み取り続け、今回もまたその芽を台無しにしてくれたジャンプ編集部には、「反吐が出るぜ!」の一言を。

*1:中には、前フリも何もなく主人公達の来世の姿が描かれてめでたしめでたしで終わる、という荒技もありましたね。

*2:成長したエルーの姿が出てきたことで一部示唆されましたが